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公正証書遺言の費用丸わかり!見落としがちな注意点!

監修
司法書士 速水陶冶
/司法書士法人はやみず総合事務所 代表

東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。

東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。

遺言をする場合には、公証役場で公正証書遺言を作成しておくと安心です。公正証書遺言は、プロの法律家である公証人がチェックしながら作成しますので、様式や内容の不備で無効になる心配がありません。

ところで、公正証書遺言を作成するには、いくらくらい費用がかかるのかが気になるという人も多いと思います。ここでは、公正証書遺言の費用や相場について説明します。

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公正証書遺言の作成について

ポイント

公正証書遺言とは?

公正証書遺言とは、公証役場で公証人に作成してもらう遺言になります。遺言には自分で書いて作成する自筆証書遺言もありますが、内容を公証人が十分にチェックしたうえで作成する公正証書遺言は、後でトラブルになる可能性も少なく、最も安全確実な遺言の方式と言えます。

公正証書遺言の必要書類

公正証書遺言を作成するときには、次のような書類を用意しておく必要があります。

① 遺言者の印鑑証明書等 遺言者の本人確認資料として、印鑑証明書(運転免許証または個人番号カードでも可)が必要です。
② 戸籍謄本 遺言により財産をもらう人が相続人である場合には、遺言者との関係がわかる戸籍謄本が必要になります。
③ 住民票 遺言により財産をもらう人が相続人でない場合には、その人の住民票が必要です。
④ 固定資産評価証明書・登記事項証明書 財産の中に不動産がある場合には、不動産の固定資産評価証明書(または納税通知書中の課税明細)と登記事項証明書が必要です。
⑤ 証人に関するメモ 公正証書遺言作成時には、証人2人以上の立ち会いが必要です。自分で証人を用意する場合には、証人予定者の氏名、住所、生年月日、職業を正確に記した書面を用意して公証役場に提出しておきます。

公正証書遺言の費用や相場はどのくらい?

公正証書遺言の費用

公正証書遺言作成にかかる費用の種類

公正証書遺言を作成するときには、公証役場に所定の手数料を支払う必要があります。また、公正証書遺言を作成する前提として、戸籍謄本や不動産の登記事項証明書などの書類を取り寄せる必要もありますので、こうした書類の取り寄せ費用がかかります。

さらに、公正証書遺言の原案作成などのサポートを弁護士、司法書士、行政書士といった専門家に依頼した場合には、専門家に支払う報酬も発生します。

  • 公証役場手数料(必ずかかる)
  • 書類の取り寄せ費用(必ずかかる)
  • 専門家報酬(依頼するとかかる)

専門家の報酬でかかる費用が変わってくる

公正証書遺言作成の際に公証人に支払う手数料は、遺言に記載する財産の価額によって変わってきます。なお、公証役場の手数料は、どこの公証役場に依頼しても同じです(下記参照)。また、書類取り寄せ費用についても、必ずかかるものですから、安くすませることができるようなものではありません。

公正証書遺言作成では、原案作成などのサポートを専門家に依頼するときに、費用の差が出てくることがあります。専門家に依頼する場合には、どこの事務所に依頼するか、また、どの程度まで業務を依頼するかによって、費用が変わってくることになります。

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公正証書遺言で公証役場に支払う費用

公正証書作成の基本手数料

公証役場で公正証書を作成する際の基本手数料は、公正証書に記載する財産の価額によって変わってきます。具体的には、次の表のようになっています。

財産の価格 手数料
100万円まで 5000円
100万円超200万円まで 7000円
200万円超500万円まで 1万1000円
500万円超1000万円まで 1万7000円
1000万円超3000万円まで 2万3000円
3000万円超5000万円まで 2万9000円
5000万円超1億円まで 4万3000円
1億円超3億円まで 5000万円ごとに1万3000円加算
3億円超10億円まで 5000万円ごとに1万1000円加算
10億円超 5000万円ごとに8000円加算

公正証書遺言の作成手数料の計算方法

公正証書遺言を作成する場合には、上記の基本手数料をもとに、次のように手数料を計算します。

  • STEP.01財産額に応じて計算
    遺言により財産を受け取る人ごとに財産の価額を算出して上記の表から手数料額を求め、これらの手数料額を合計して遺言書全体の手数料額を算出します。
  • STEP.02加算①
    全体の財産が1億円以下の場合には、STEP.01で算出された手数料額に1万1000円を加算します。
  • STEP.03加算③
    遺言書は原本、正本、謄本を各1部作成しますが、枚数によって謄本手数料(コピー代)が加算されます。
  • STEP.04加算③
    遺言者が公証役場に赴くことができず、公証人が出張する場合には、STEP.01で算出された手数料の2分の1が加算されるほか、公証人の日当と交通費がかかることになります。

公正証書遺言作成時に公証役場以外でかかる費用

必要書類の取り寄せ費用

公正証書遺言を作成する際には、役所等で戸籍謄本、印鑑証明書、住民票、登記事項証明書などの書類を取り寄せる必要があります。書類の取得費用は、戸籍謄本が1通450円印鑑証明書や住民票が1通300円程度登記事項証明書が土地・建物1つにつき600円になります。

公正証書遺言で専門家に支払う報酬

公正証書遺言の作成に関しては、弁護士、司法書士、行政書士といった専門家にサポートを依頼し、遺言の原案作成や必要書類の取り寄せ、公証役場との調整などを任せることができます。この場合には、専門家に支払う報酬が発生することになります。

専門家の報酬に関して一律の基準はないため、それぞれの事務所で規定された報酬を支払うことになります。また、専門家には、遺言の原案作成のほか、証人や遺言執行者を依頼することもできますので、どの範囲のサポートを受けるかによっても金額が変わってきますが、おおよそ7万円~20万円程度でしょう。

公正証書遺言にかかる費用の事例

公正証書遺言を作成するときにかかる費用は、上記で説明したとおり、公証人に支払う費用(公証人手数料)、専門家の報酬、必要書類の取り寄せ費用の3つです。

ここでは、遺言により妻に現金1,000万円、長男に土地(固定資産税評価額1,000万円)を譲る例で考えてみましょう。

公証人手数料

公証人手数料は公証人手数料令という法令で決まっており、全国どこの公証役場に依頼しても基本的に金額は同じです。公証人手数料の主なものは公正証書の作成手数料で、遺言書に記載する財産の価額等によって変わります。これ以外に謄本手数料(証書の枚数により加算)などもかかります。

公正証書作成手数料を計算するときには、財産を受け取る人ごとに手数料を計算して合計し、全体が1億円以下の場合には1万1,000円を加算します。

上記の例では、

(妻の分1万7,000円)+(長男の分1万7,000円)+1万1,000円

=4万5,000円

これに謄本手数料等で数千円程度かかるので、かかる費用は約5万円となります。

専門家の報酬

専門家の報酬については、依頼する事務所や依頼内容によって変わります。

行政書士に遺言書の起案等を依頼する場合には、財産の価額によって報酬が大きく変わることはありません。日本行政書士連合会の平成27年度報酬額統計調査によると平均5万7,726円、最頻値は5万円となっています。

なお、自分で証人を用意できない場合、証人になってもらうには1名につき1万円程度が加算されます。また、専門家に遺言執行者を依頼する場合には、遺言執行時までの遺言書保管費用などをあらかじめ払っておかなければならないこともあります。

一般には、専門家費用として、約7~20万円程度はかかると思っておいた方がよいでしょう。

必要書類の取り寄せ費用

公正証書遺言で相続人に財産を譲る場合には相続人との関係がわかる戸籍謄本、相続人以外に財産を譲る場合にはその人の住民票が必要です。このほかに、不動産を譲る場合には登記事項証明書や固定資産評価証明書も必要になります。

それぞれの書類の取得手数料は、次のとおりです。

書類 手数料
戸籍謄本 450円(除籍・改製原戸籍については750円)
住民票 300円程度(市町村によって異なる)
不動産の登記事項証明書 1通につき600円
固定資産評価証明書 不動産1個につき300円程度(市町村によって異なる)

上記の例で、戸籍謄本1通、登記事項証明書1通、固定資産評価証明書1通を取得したとすると、かかる費用は約1,350円、役所までの交通費や郵送料を含めると2,000~3,000円程度になることが多いでしょう。

1から3を合計すると、上記の例で公正証書遺言にかかる費用は、約15万3,000円となります。

公正証書遺言を依頼する際の注意点

依頼時の注意点・ポイント

証人が2人必要

公正証書遺言は、証人2人の立ち会いのもとに作成する必要があります。未成年者や利害関係人は証人になることができません。利害関係人とは、遺言者が亡くなったときに相続人になる人や、遺言により財産をもらう人のほか、これらの人の配偶者や直系血族も含まれます。

自分で証人を用意しようにも、頼める人がなかなかいないということもあると思います。遺言の内容は秘密にしたいことが多いはずですから、証人は誰にでも簡単に頼めるものではないのが普通です。

公正証書遺言のサポートを司法書士等に依頼した場合には、司法書士等に証人として立ち会ってもらうことができます。司法書士等は守秘義務がありますから、遺言の内容がどこかに漏れてしまう心配もありません。

なお、証人は、公証役場で手配してもらうこともできます。この場合には、証人1人につき1万円程度の手数料が発生します。

遺言執行者を指定しておいた方が良い

遺言を作成するときには、遺言執行者を指定することができます。遺言執行者を指定しておくことで、遺言の内容をスムーズに実現することが可能になります。

遺言執行者には未成年者・破産者以外ならなることができますが、相続人の中から遺言執行者を指定すると他の相続人から不信感を持たれてトラブルになることも考えられます。第三者である司法書士や行政書士等の専門家を遺言執行者に指定することで、安心して手続きを進められる可能性が高くなります。

公正証書の種類について

公正証書がよく利用されるものや、公正証書作成が義務付けられているものとしては、次のような書面あります。参考までにご確認ください。

遺言書

公正証書遺言は民法に定められている遺言の方式の一つです。遺言を公正証書にすれば、法律的に有効な遺言を作成することができ、遺言書の紛失や偽造も防止できます。

任意後見契約書

任意後見契約を締結する場合には、公正証書作成が要件になっています。

金銭消費貸借契約書

お金を貸すときに公正証書を作成しておけば、裁判手続きを経ずに強制執行することが可能になるため、公正証書がよく利用されます。

債務弁済契約書

売買代金や借金など何らかの債務がある場合に、その債務を承認した上で、支払方法を定める契約を結ぶことがあります。このような債務の承認・弁済についても、公正証書が利用されることが多くなっています。

不動産賃貸借契約書、借地権関係

土地の賃貸借契約は、契約期間が長期に及ぶことが多いので、公正証書を作成することがあります。なお、事業用定期借地権設定契約については、公正証書によらなければ効力がありません。一般定期借地権設定契約、定期建物賃貸借契約も、公正証書などの書類によらなければ効力がないとされています。

マンションの管理規約

マンションなどの管理規約は区分所有者が総会等で定めますが、規約敷地、規約共用部分など一部の項目については、最初に建物の専有部分を全部所有する者(分譲業者)が公正証書により単独で規定を設定できます。

離婚協議書

離婚時に未成熟の子がいる場合、養育費の支払いの取り決めをしなければなりません。養育費支払いは長期間に及ぶことが多いため、判決を得ないで強制執行できるよう、公正証書を作成するのが安心です。離婚時には養育費以外にも、慰謝料、財産分与などで金銭による支払い義務が生じることが多く、公正証書の必要性が高いと言えます。

事実実験公正証書

将来の争いに備え、公証人自身が見聞きした事実について作成してもらう公正証書です。たとえば、株主総会の決議を公証人に見聞きしてもらい、手続きが適正に行われた事実の証明に利用するようなケースがあります。延命措置を拒否する意思を表明する「尊厳死宣言公正証書」も事実実験公正証書の一種です。

まとめ

公正証書遺言を司法書士に依頼すると、公証役場に支払う手数料以外の費用もかかってきます。しかし、司法書士に遺言の原案作成を依頼すれば、複雑な内容の遺言でもあらかじめじっくり打ち合わせすることが可能になるほか、証人や遺言執行者についても依頼できるなど、様々なメリットがあります。遺言について迷われている方は、ぜひ当事務所にご相談ください。

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(はやみず とうや)

東京司法書士会(登録番号 5341号)
※簡易裁判所代理権認定(認定番号 1001015号)

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