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会社の定款変更にかかる費用相場と見落としがちな注意点

監修
司法書士 速水陶冶
/司法書士法人はやみず総合事務所 代表

東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。

東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。

株式会社を運営していると、定款を変更しなければならない場面が出てくると思います。定款変更する際には、法律で定められた手続きが必要になり、そのための費用がかかることもあります。ここでは、定款変更にかかる費用と注意点について説明します。

会社登記代行

定款変更が必要な時とは?

定款

会社設立時に作成した定款を、その後変更しなければならないケースがあります。定款変更の手続きが必要になるのは、次のような場面です。

会社名の変更

会社の定款には、必ず会社名(商号)が書かれているはずです。会社名を変更するときには、当然に定款変更手続きをしなければなりません。

事業目的の変更

事業目的も会社の定款に必ず書かれている事項です。事業目的を新たに追加する場合や、まったく違う内容に変更する場合には、定款変更手続きが必要です。

本店の移転

本店を移転した場合、定款変更が必要なケースと不要なケースがあります。定款への本店所在地の記載は、最小行政区画まででも番地まででもよいことになっているからです。

たとえば、定款に本店所在地として「東京都新宿区」と記載されている場合、新宿区内での移転であれば定款変更は不要です。

増資

資本金の額は定款には通常は記載されていないため、増資して会社の資本金の額が変わっても、定款変更は必要ありません。ただし、定款に記載されている発行可能株式総数を上回る株式を発行する場合には、定款変更が必要です。

役員の人数や任期の変更

通常の取締役や監査役の変更(就任・退任)では、定款変更は不要です。ただし、役員の人数や任期を変更する場合には、定款変更が必要になることがあります。

たとえば、取締役会設置会社では取締役3名以上が必要になるため、定款でも取締役の人数が3名以上と記載されているはずです。取締役会を廃止して取締役を1名にする場合には、定款に記載されている取締役の人数も変更しなければなりません。

また、取締役の任期は定款に記載していない場合2年であるため、会社設立後に取締役の任期を10年に伸長したい場合には、定款変更が必要になります。

定款変更の費用相場

定款変更の際には登記が必要になるケースが多く、この場合には『登記費用』がかかります。登記費用とは、登録免許税司法書士報酬になります。

【登記費用】

  • 登録免許税
  • 司法書士報酬

登録免許税

登記申請の際に納めなければならない税金で、通常は3万円になります。変更事項が複数あっても、申請1件につきかかる登録免許税は3万円となりますが、『本店移転』と他の事項の変更を合わせて行う場合には、別途3万円を支払うことになります。また、本店を他の法務局が管轄する地域に移転する場合には、旧本店所在地と新本店所在地の両方で登記申請が必要になるため、本店移転の登録免許税は、6万円となります。

なお、支店の登記がある会社で商号や本店を変更する場合には、本店所在地だけでなく、支店所在地での登記申請も必要です。支店所在地での登記にかかる登録免許税は9,000円になります。

司法書士報酬

司法書士に依頼した場合にかかる費用です。会社名や事業目的の変更だけなら2~4万円程度が相場です。他の法務局の管轄へ本店所在地を移転する場合には、4~7万円程度かかります。

定款変更で費用を抑えるためには

定款変更により変更登記が必要なケースでは、登録免許税と司法書士報酬がかかります。司法書士に依頼せず自社のスタッフのみで手続きすれば、費用を抑えることができます。

司法書士に依頼する場合、報酬額は事務所によって異なりますので、安く手続きしてもらえる事務所を選ぶ方法もあります。ただし、ホームページに掲載されている料金は安くても、いろいろな理由で追加料金を請求されることもあるので、事前にきちんと見積もりしてもらった方が安心です。変更登記には期限もありますから、チェック体制がしっかりしていて信用できる事務所に依頼しましょう。

そもそも定款には記載されている内容とは?

定款に記載する事項は、次の3つに分かれます。

(1) 絶対的記載事項

定款に必ず記載しなければならないとされている事項で、記載していなかったら定款自体が無効になってしまう事項です。具体的には、次のような事項になります。

  • 商号
  • 事業目的
  • 本店の所在地
  • 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
  • 発起人の氏名又は名称及び住所

(2) 相対的記載事項

記載していなくても定款自体は有効ですが、定款に記載していなければその事項の効力が認められない事項です。たとえば、現物出資、財産引受、株式譲渡制限に関する定め、株券発行の定め、取締役会の設置、役員の任期の伸長などが相対的記載事項になります。

相対的記載事項を変更する場合にも、定款を変更しなければその事項の効力が認められませんので、定款変更手続きが必要です。

(3) 任意的記載事項

定款に記載しなくても定款自体の効力に影響はなく、定める場合にも必ずしも定款で定めなくてもよい事項です。たとえば、事業年度、定時株主総会の招集時期、取締役等の役員の員数などが任意的記載事項です。

任意的記載事項は本来定款に書いても書かなくてもいい事項ですが、定款に書いてある以上、変更が生じたときには定款変更の手続きが必要になります。

種 類 内 容 具体的な事項
絶対的記載事項 定款への記載が義務付けられている事項
(※記載がなければ定款自体が無効)
・目的
・商号
・本店の所在地
・設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
・発起人の氏名又は名称及び住所
相対的記載事項 定款への記載は義務ではないが有効にするためには記載が必要な事項 ・現物出資
・財産引受
・株式譲渡制限に関する定め
・株券発行の定め
・取締役会の設置
・役員の任期の伸長
任意的記載事項 記載してもしなくても有効性には影響がない事項 ・事業年度
・定時株主総会の招集時期
・取締役等の役員の員数

定款変更は株主総会の決議が必要

株主総会

定款変更に必要な株主総会の決議は特別決議

上にも書いたとおり、会社法では、定款の変更に株主総会の決議を要求しています。この場合の株主総会の決議は、特別決議とされています(会社法309条2項)。

株主総会の特別決議とは、議決権を行使できる株主の議決権の過半数(※定款で3分の1まで下げることも可能)を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上(定款でこれを上回る割合を定めることも可能)の賛成で行う決議です。

変更後の定款に公証人の認証は不要

原始定款には公証人の認証が必要ですが、変更後の定款には公証人の認証は不要です。変更後の定款については、会社で保管しておけばよいことになります。

なお、定款を変更したときには、最初に作成した定款(原始定款)を書き替えなければならないわけではなく、定款変更決議を行った株主総会議事録を原始定款と合わせて保管しておくのでかまいません。

会社登記代行

定款変更する際の注意点

注意点

登記が必要なケースが多い

『定款に記載されている事項』と『登記されている事項』は同じではありません。定款変更した場合、変更した事項が登記事項であれば変更登記が必要ですが、登記事項でなければ変更登記は不要です。

具体的には、以下のようになります。

変更登記が必要なケース 変更登記が不要なケース
・商号の変更
・事業目的の変更
・本店移転
・発行可能株式総数の変更
・公告方法の変更...等
・事業年度(決算月)の変更
・役員の人数や任期...等

登記申請が不要なケースでは、定款変更に必要な手続きは、株主総会で特別決議を行うことのみです。株主総会招集通知の発送などの実費のほかは、特に費用はかかりません。

定款変更の際には、必ず登記事項に変更が生じるかどうかを確認するようにしましょう。

定款変更後の登記には期限がある

変更登記が必要なケースでは、変更があったときから2週間以内に法務局で登記申請をしなければなりません。本店移転の場合には、定款変更決議をした日ではなく、現実に本店を移転した日から2週間以内となります。

期限内に変更登記をしなかった場合、代表者が100万円以下の過料に処せられる旨の規定もあるため、注意しておきましょう。

支店での登記が必要になることもある

支店登記がある場合には、定款変更の際、支店所在地での登記が必要になることがあります。支店所在地での登記事項は、商号本店の所在地同一管轄の支店の所在地となっています。これらの事項に変更がある場合には、支店所在地での登記申請が必要となり、その際にも登録免許税がかかります。支店所在地における変更登記の登録免許税は9000円になります。

まとめ

定款変更のためには、株主総会の特別決議が必要になります。さらに、登記事項の変更が生じる場合には、変更登記の手続きが必要になり、登録免許税などの費用もかかります。定款変更には手間や費用がかかることがありますが、必要な手続きを怠っていると罰則もあります。

定款変更の際には、必要な手続きを確認したうえで、スムーズに手続きが進むよう準備しておきましょう。

会社登記代行


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速水 陶冶
(はやみず とうや)

東京司法書士会(登録番号 5341号)
※簡易裁判所代理権認定(認定番号 1001015号)

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