不動産売却でローンを返済する場合の注意点
監修
司法書士 速水陶冶
/司法書士法人はやみず総合事務所 代表東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。
東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。
住宅ローンの支払いがまだ残っているけれど、自宅を売却したいと考えるケースもあると思います。住宅ローン返済中の不動産を売却するときには、残っている住宅ローンをどうやって返済するかを考えなければなりません。
ここでは、不動産を売却してローンを返済する場合の注意点についてまとめています。
住宅ローン返済中の不動産は売却できる?
住宅ローン返済中の不動産も売却は可能
住宅ローンというのは、35年などの長期の返済期間を設定して借りるケースが多いと思います。しかし、当初は一生住むつもりで購入した住宅でも、家族の数が増えて手狭になったり、転勤などの事情で住めなくなったりすることはよくあります。
このような場合、住宅ローンの支払いがまだ終わっていない住宅を売却して手放してよいものかどうか悩んでしまうでしょう。
住宅ローン返済中の不動産でも、売却することは可能です。ただし、住宅ローン返済中の不動産には、金融機関の抵当権が設定されているため、抵当権を抹消しなければ売却ができません。
抵当権は住宅ローンの担保
住宅購入時にローンを組むときには、購入する住宅に、担保として金融機関の抵当権が設定されます。もしローン債務者が約束どおり支払いを行わなかった場合には、金融機関は抵当権を実行して住宅を競売にかけ、競売代金からローン残債を回収することになります。
抵当権が設定されている不動産は、住宅ローンが残っており、支払いをしなければ競売にかけられてしまう可能性のある不動産ということになります。当たり前ですが、購入してもいつ取り上げられるかわからないような不動産を購入する人はいません。
ローン返済中の不動産を売却するには、その前提として、抵当権の抹消手続きが必要ということになります。
不動産を売却したお金でローンを返済できれば問題ない
不動産を売却すると、売却代金が得られます。住宅ローンが残っていても、売却代金で残っている住宅ローンを返済できれば、抵当権を抹消することが可能です。
通常、住宅ローン返済中の不動産の売買契約では、契約締結時に所有権が移転するのではなく、契約後の決済日以降に所有権が移転する旨の合意をします。決済日には、受け取った売却代金でローン残債の返済を行うと同時に、買主へ物件を引き渡し、抵当権抹消登記と所有権移転登記を行います。
つまり、買主から受け取った売却代金で住宅ローンを完済できれば、抵当権が抹消された状態で買主に所有権が移転することになるため、問題なく売却ができることになります。
売却の可否を判断するには不動産の査定が必要
住宅ローン返済中の不動産を売却できるかどうかを判断するには、どれくらいの価格で売却できるかを知る必要があります。不動産の売却価格は、不動産会社に見積もり(査定)してもらうことができます。
査定はどこの不動産会社でも無料でやってもらえますので、複数の不動産会社に査定してもらうのがおすすめです。
不動産売却でローン返済額が足りない時は?
不動産の売却価格を査定してもらったけれど、売却価格がローン残高を下回る状態は、「オーバーローン」と呼ばれます。オーバーローンの場合には、原則的には売却はできません。しかし、次のような方法により、売却できる可能性はあります。
不足分を自己資金で用意する
売却価格とローン残高の差額を自己資金で用意することができれば、抵当権を抹消することができます。この場合にも、問題なく不動産の売却ができることになります。
不足分を借入する
売却価格とローン残高の差額を全額自分で用意できない場合に、家族や友人などから借りて用意できれば、売却が可能になります。金融機関から借りる方法もありますが、現に住宅ローンが残っている状態で金融機関に融資を申し込んでも、審査に通らないことが多くなっています。
たとえ金融機関から借入ができても、高い金利を支払わなければなりませんから、あまりおすすめとは言えません。
任意売却をする
任意売却とは、金融機関と交渉し、住宅ローン返済中の不動産の抵当権を外してもらう旨の合意をした上で、不動産を売却する方法です。任意売却によれば、オーバーローンの不動産でも売却ができます。
この場合、不動産の売却代金を使っても返済できないローン残額については、無担保債権となり、金融機関と新たな契約をして分割払いしていくことになります。
任意売却をするには、住宅ローンを延滞している必要があります。任意売却をすれば、ブラックリストに載ることになるため、一定期間は新規の借入が難しくなってしまいます。
毎月の住宅ローンの返済が困難になり不動産を売却したいという場合には、競売よりも任意売却の方が高く売れるというメリットがあります。
不動産の買い替えで新しいローンを組む場合
オーバーローンでも買い替えなら売却できる可能性がある
不動産を売却して新しい不動産を購入したいというケースもあると思います。このような不動産の買い替えの場合、ローン残高が売却価格を上回っても、住み替えローン(買い替えローン)を利用することで、売却ができることがあります。
住み替えローンとは
住み替えローンとは、住宅ローン返済中の不動産を売却しても返済しきれないローン残債を、新しく購入する不動産の購入資金と合わせて借入するローンになります。
住み替えローンを利用すれば、ローン残高と売却価格の差額を用意しなくても、通常の売却が可能になります。
住み替えローンが利用できるケース
住み替えローンが利用できるのは、あくまでオーバーローンのケースになります。不動産の売却価格がローン残高を上回っている場合には、売却代金で売却する物件のローンを一括返済してから、購入する物件について新たに住宅ローンを組む必要があります。
住み替えローンの注意点
住み替えローンでは、金融機関は購入する物件の価格を上回る金額を融資することになります。そのため、住み替えローンは通常の住宅ローンよりも審査が厳しくなってしまいます。
住み替えローンを利用したい場合でも、必ず利用できるとは限らない点に注意する必要があります。
また、住み替えローンを利用するときには、売却する物件の決済日と購入する物件の決済日をする必要があります。売却と購入のタイミングが合わなければ、住み替えローンは利用できません。
無理にタイミングを合わせようとすると、想定していたよりも安い価格で売却しなければならなくなってしまうこともあります。「期限内に今の家が予定通り売れなかったときには契約を白紙に戻す」という買い替え特約を付けて新しい物件を購入するなど、十分注意して手続きを進めなければなりません。
不動産の売却前にローン返済プランを考えておく
住み替えローンでは、途中でローンの返済ができなくなった場合、不動産を売却しても完済できない可能性が高くなってしまいます。そのため、通常の住宅ローン以上に、ローン返済プランをよく考えておく必要があります。
将来の年収や必要になる費用などを想定し、事前に返済シミュレーションを行った上で、無理のない返済プランを立てておきましょう。
まとめ
ローン返済中の不動産を売却するには、ローン残債を完済し、抵当権抹消の手続きをする必要があります。不動産の売却代金を使ってもローンを完済できない場合でも、不動産を売却する方法はあります。
当事務所でも不動産の売却サポートを行っていますので、手続きでお困りの方はぜひご相談ください。
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