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会社設立に現物出資を含む場合の注意点

監修
司法書士 速水陶冶
/司法書士法人はやみず総合事務所 代表

東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。

東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。

株式会社を設立するときには、資本金が必要になります。資本金は全額を現金で払込するのが一般的ですが、現物出資として資産価値のある現物を資本金の一部に充てる方法もあります。

今回は、会社設立に際して現物出資を行う方法や現物出資の注意点について説明します。

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会社設立時には現物出資により資本金を増やせる

現物出資とは

会社の設立時には発起人が資本金として現金を出資するのが通常です。しかし、出資するのは現金でなくてもかまいません。自己所有の財産の現物を出資することもできるようになっており、これを現物出資といいます。

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現物出資のメリット

以前は株式会社を設立する場合には1,000万円以上の資本金が必要という最低資本金制度がありました。しかし、新会社法の施行により最低資本金制度が廃止され、現在は資本金1円以上で株式会社の設立が可能です。

しかし、資本金1円で会社を設立するというのは現実的ではありません。資本金が1円しかなければ、会社の運転資金もほぼ皆無ということになってしまいます。資本金の金額が少ないと、対外的な信用が得られず、取引先を開拓することも難しくなります。

自己資産を現物出資すれば、手持ちの現金が少なくても、会社の資本金を増やすことができます。会社設立の際、個人で財産的価値のある物を持っている場合には、会社へ現物出資することを検討してみましょう。

現物出資の対象にできる資産

現物出資できるのは、貸借対照表に資産として計上できるものです。具体的には、以下のようなものが対象になります。

不動産 土地、建物など
有価証券 株式、債券など
動産 パソコン、OA機器、自動車など
会員権 ゴルフ会員権、リゾート会員権など
無形固定資産 特許権、商標権などの知的財産権、営業権

資本金を増やしたいからと言って、手持ちの物をたくさん寄せ集めて現物出資しようとすると、資産計上も複雑になってしまいます。現物出資するなら10万円以上の資産と考えておくとよいでしょう。

現物出資した資産の評価額の決め方

現物出資の資産価値は時価で計上する

現物出資した資産は資本金に計上しなければならないので、評価額を出す必要があります。資産の評価は時価によって適切に行わなければなりません。資産を過大に評価すると、中身がないのに会社に多額の資産があるように見えてしまい、取引の円滑と安全が守られなくなるからです。

現物出資した資産を過大評価した場合の責任

現物出資した資産の価額は定款に記載しなければなりません。もし資産の時価が定款に記載された価額に著しく不足するときには、発起人と設立時取締役が連帯して不足分を支払う義務を負うことが会社法に定められています(52条)。

500万円を超える現物出資は第三者の検査が必要

現物出資する際には、資産の評価が適切に行われているかを確認するために、裁判所が選任した検査役の調査が行われるのが原則となっています。ただし、以下の場合には検査役の調査は不要とされています。

1.現物出資した財産の総額が500万円以下の場合

2.市場価格のある有価証券であり、定款に定めた価額が市場価格を超えない場合

3.定款に記載された価額が相当であることについて、弁護士・公認会計士・税理士等から証明を受けた場合(不動産については不動産鑑定士の鑑定評価も必要)

検査役の調査を行うとなると、費用も日数もかかってしまうため、負担が大きくなります。500万円以下であれば検査役の調査は不要なので、現物出資する資産の総額は500万円以内に抑えておくのがおすすめです。

現物出資で会社設立する手順

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現物出資を行う流れは、次のようになります。

1. 現物出資する資産の価格を調査する

現物出資する資産は、購入時の価格ではなく現在の時価で評価します。たとえば、自動車の場合には、インターネットを利用して車種や年式から中古車市場での価格を調べられます。

2. 定款に必要事項を記載

現物出資を行う場合には、定款に次の事項を記載しなければなりません。

○現物出資する人の氏名(または名称)

○現物出資する財産及びその価額

○現物出資する人に割り当てる株式数

現物出資に関する定款の記載例は次のようになります。

第○条(現物出資)

現物出資をする者の氏名又は名称、当該財産及びその価額並びにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数は次のとおりである。

(1) 現物出資者の氏名又は名称  ○○○○

(2) 現物出資の財産及びその価額

  ○○社製 乗用車 車種○○ 車台番号○○○○ 1台 金60万円

(3) 割り当てる設立時発行株式の数 60株

3. 調査報告書の作成

現物出資がある場合には、設立時取締役等が、定款に記載された価額が相当かどうかの調査を行う必要があります。出資資産が500万円以下で検査役の調査が不要なケースでも、設立時取締役等の調査は必要です。

設立時取締役等が調査を行ったら、調査報告書を作成しなければなりません。調査報告書は設立登記の際の添付書類となります。以下は調査報告書の記載例の一例です。厳密な書式があるわけではありませんから、会社の実情に合わせて作成してください。

調査報告書

 令和○年○月○日○○株式会社(設立中)の設立時取締役に選任されたので、会社法第46条の規定に基づいて調査をした。その結果は次のとおりである。

 調査事項

1 定款に記載された現物出資財産の価額に関する事項(会社法第33条第10項第1号に該当する事項)

定款に定めた、現物出資をする者は発起人○○○○であり、出資の目的たる財産、その価額並びにこれに対し割り当てる設立時発行株式の種類及び数は下記のとおりである。

 イ ○○社製 乗用車

   車種 ○○ 

   年式 平成○○年式

   車台番号○○○○

   定款に記載された価額 金60万円

   これに対し割り当てる設立時発行株式 普通株式60株

 上記イについては、当該車の価格は時価60万円以上と見積もられるべきところ、定款に記載した評価価格は金60万円であり、これに対し割り当てる設立時発行株式の数は60株であることから、当該定款の定めは正当なものと認める。

2 現物出資の目的たる財産の給付があったことは、別紙財産引継書により、完了していると認められる。

3 会社成立後に譲り受けることを約した財産、会社成立により発起人が受ける報酬そのほかの特別の利益、会社の負担する設立に関する費用の定めはない。

 令和○年○月○日

  ○○株式会社

   設立時取締役 ○ ○ ○ ○ 印

財産引継書の作成

現物出資では、発起人が財産を会社に引き渡す必要があります。このときには、財産引継書を作成しなければなりません。現物出資する人が複数いる場合には、現物出資者ごとに財産引継書を作成します。財産引継書も設立登記の際に添付します。

財産引継書の記載例は次のようになります。

財産引継書

現物出資の目的たる財産の表示

イ ○○社製 乗用車

車種 ○○ 

年式 平成○○年式

車台番号○○○○

定款に記載された価額 金60万円

以上、私所有の上記財産を現物出資として給付します。

 令和○年○月○日

  ○県○市○町○丁目○番○号

  発 起 人 ○ ○ ○ ○  印

 ○○株式会社 御中

名義変更

パソコンや機械類などは会社に現物の引き渡しをすれば現物出資したことになりますが、不動産、自動車、有価証券などは名義変更が必要になります。名義変更は、会社設立後に、会社の登記事項証明書を提出して行うのが通常です。

まとめ

現物出資を活用すれば、現金があまり用意できなくても、資本金を多めにできます。資本金を増やして借入や取引の際に有利になるようにしたい場合には、現物出資を検討しましょう。

会社設立の手続きには手間がかかりますが、現物出資がある場合にはさらにやらなければならないことが増えてしまいます。現物出資を含む会社設立は、専門家に依頼するのがおすすめです。

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速水 陶冶
(はやみず とうや)

東京司法書士会(登録番号 5341号)
※簡易裁判所代理権認定(認定番号 1001015号)

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