相続登記を放置する6つの危険!長期間未登記でも間に合う手続き手順を解説
監修
司法書士 速水陶冶
/司法書士法人はやみず総合事務所 代表東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。
東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。


相続登記はすぐにしなくても大きな問題が起こらないことも多いため、つい後回しにしがちです。しかし、登記をしないまま放置しておくと、将来的に思わぬトラブルを招くこともあります。2024年4月から相続登記は義務化され、放置し続けると過料(罰金)が科される可能性もあるので注意が必要です。
今回は、相続登記を放置することの具体的なリスクと、すでに長期間放置してしまった場合の進め方について、わかりやすく解説します。
【最重要】2024年4月1日から相続登記が義務化され、「相続を知った日から3年以内」の期限が設定されました。放置すると10万円以下の過料(罰金)が科されます。
放置で発生する重大リスク時間が経つほど相続人が増大し、手続きが複雑化・困難化します。さらに、 固定資産税の増加(最大6倍)、他の相続人の債権者による差押えなど、金銭的・法的なトラブルが雪だるま式に増えます。
長期間放置して手続きが複雑になったケースでも、司法書士に依頼すれば、困難な戸籍収集から登記申請までスムーズに解決可能です。

目次
相続登記とは?なぜ今すぐ必要なのか

相続登記の必要性を正しく理解していないまま放置してしまう方は少なくありません。まずは、相続登記とはどんな手続きで、なぜ必要なのかを確認しておきましょう。
相続登記とは相続による不動産の名義変更
相続登記とは、不動産の所有者が亡くなった際に、その不動産を相続した人が行う名義変更の手続きです。不動産の所有者などの情報は、法務局に登記されています。所有者が変わったときには、法務局で所有権移転登記を行って名義を変える必要があります。不動産の所有権はさまざまな原因で移転しますが、相続を原因とする所有権移転登記を相続登記と言います。
所有者であることを第三者に主張するには登記が必要
不動産を相続しても、登記上の所有者が被相続人(亡くなった人)のままであれば、第三者に対して「自分が現在の不動産の所有者である」ということを主張できません。せっかく不動産を所有していても、活用できないことになります。
たとえば、不動産を売却しようとしても、名義変更されていなければ売買契約を締結できません。金融機関から融資を受けるため不動産を担保に入れようとしても、登記が完了していないと審査に通らない可能性があります。
相続登記をしないで長期間放置する6つのリスク

相続登記をしなくても、すぐに売却等しない限り、あまり問題を感じないかもしれません。しかし、時間が経てば経つほど、さまざまなリスクが顕在化していきます。ここでは、相続登記をしないで長期間放置するリスクを6つ紹介します。
1.権利関係が複雑化して手続きの負担が増大
相続登記を放置している間に、さらに別の相続が発生すると、不動産に対して権利を持つ人の数がネズミ算式に増えていきます。
たとえば、父の土地を相続した子が登記をしないまま亡くなると、その子の子(父の孫)や配偶者が新たな相続人として関わってきます。これが10年、20年と続くと、面識もない遠い親戚まで含めた数十人が相続人となるケースも珍しくありません。相続人が増えすぎると、遺産分割協議の話し合い自体が困難になり、合意できずに家庭裁判所での調停や審判に発展するリスクが高まります。
2. 相続人の高齢化により協議が困難に
相続登記をしないまま時間が経つと、相続人の高齢化が進み、認知症になる人が出て来る可能性もあります。認知症で意思能力がない人は、遺産分割協議に参加できません。この場合、遺産分割協議を進めるには、成年後見制度を利用して家庭裁判所に後見人を選任してもらう必要があります。
相続登記をしないまま放置していると、相続人が高齢化し、手続きのために時間や労力がかかってしまうことが多くなるのです。
3. 持分を売却されたり差押えされたりする可能性も
遺産分割協議が終わる前であっても、各相続人が自分の持分を他人に譲渡することは可能です。また、借金を滞納している相続人がいる場合、持分の差押えを受ける可能性もあります。相続登記をしないままでいると、他人が不動産に対して権利を持ち、トラブルになるリスクも考えられます。
4. 必要書類が入手困難に
相続登記の際には、被相続人の出生から死亡までの戸籍、相続人の戸籍謄本、被相続人の住民票の除票(または戸籍の附票)など多くの書類が必要です。相続開始後長期間経過すると、役所での保管期限が過ぎてしまい、必要書類が取得できなくなることがあります。 時間が経つとただでさえ戸籍が複雑化してしまいます。相続登記をしないで長期間放置すると、必要書類を集めるための時間や費用も余分にかかってしまうことが多くなります。
5. 固定資産税の負担が増える可能性
不動産の所有者には固定資産税や都市計画税の納税義務があります。所有者が亡くなった場合、たとえ相続登記が完了していなくても、納税義務は相続人に引き継がれます。遺産分割協議が終わるまでは、相続人全員が納税義務を負うことになります。不動産をもらうつもりがない相続人も、固定資産税等を負担しなければならないこともあります。
なお、相続した不動産を空き家のまま管理せずに放置した場合、自治体によって「特定空き家」に認定されることがあります。「特定空き家」になると、固定資産税等を軽減する特例の適用が受けられず、固定資産税が最大6倍、都市計画税が最大3倍になってしまいます。相続した不動産を放置すると思わぬ負担が生じることを認識しておきましょう。
6. 2024年4月から義務化!10万円以下の過料(罰金)が科されるリスク
2024年4月1日以降、相続登記は法律によって義務化されています。正当な理由がないのに相続登記をしないと、10万円以下の過料(行政罰)が科される可能性があります。
相続登記の期限は、原則として相続を知った日から3年以内です。義務化前に相続が発生している不動産についても、2024年4月1日または不動産の相続を知った日から3年以内に相続登記を行わなければなりません。
相続登記をせずに放置していると、余計なお金を払わなければならないことにもなってしまいます。
放置していた相続登記を進めるための基本手順

相続登記をしなければならないというと、何から手を付けてよいかわからない方も多いでしょう。相続登記を進めるための基本的な流れを、わかりやすく説明します。
登記簿謄本を確認
まずは対象となる不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)を取得しましょう。登記事項証明書は、法務局やオンラインで取得可能です。登記事項証明書を見れば、不動産に関する詳しい情報がわかります。現在の登記名義人が誰になっているかも確認できます。
相続人を確定
相続人が誰であるかは、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍を取り寄せて確認する必要があります。戸籍は結婚などの際に変わるため、一生同じではありません。一つの役所だけでは揃わないことも多くなっています。また、戸籍を収集する過程で知らない相続人が出て来ることも珍しくありません。
相続発生から長い期間が経過している場合、戸籍収集に困難をきわめることがあります。戸籍収集の段階から専門家に依頼するのがおすすめです。
遺産分割協議
相続人が複数いる場合には、遺産分割協議を行って、誰が不動産を相続するのかを決めます。不動産は共有にもできますが、共有状態はトラブルのもとなので、できるだけ避けた方が無難です。
遺産分割協議は相続人全員で行わなければなりません。連絡先がわからない相続人も、住所などを調べて連絡し、遺産分割協議に参加してもらう必要があります。相続人が一人でも欠けていれば、遺産分割協議が無効となってしまいます。
遺産分割協議で決まった内容は、遺産分割協議書という書面にまとめ、相続人全員が署名・押印し、印鑑証明書を添付する必要があります。
登記申請
登記申請の際には戸籍謄本一式や遺産分割協議書、印鑑証明書のほか、被相続人の住民票の除票、不動産を相続する人の住民票、固定資産評価証明書などが必要です。 必要書類をすべて集め、登記申請書を作成して法務局に提出します。書類に不備があると、補正を求められることや、申請が却下されることもあります。登記申請は司法書士に代行を依頼できますので、不安な場合には早めに司法書士に相談しましょう。
放置していた相続登記をする際の重要な注意点

相続登記を進めるうえで、思わぬ落とし穴に陥らないよう注意点も押さえておく必要があります。ここでは、スムーズに登記を完了させるために知っておくべきポイントを解説します。
遺言書があれば遺言書に従う
被相続人が有効な遺言書を残している場合には、原則として遺言書の内容に従って相続手続きを進めます。この場合、遺産分割協議は不要となり、遺言書を添付して登記申請を行います。 遺言書には手書きの遺言書(自筆証書遺言)や公正証書遺言などの種類があります。自筆証書遺言が残されている場合には、2020年7月に開始した自筆証書遺言書保管制度を利用していない限り、事前に家庭裁判所での検認手続きが必要です。
早めに専門家に依頼
相続登記をしないで長期間放置されている不動産の場合、権利関係が複雑化していて、必要書類の収集も困難な場合があります。一方で、2024年4月からは相続登記が義務化されているため、早めの対応が肝心です。 これから放置していた相続登記の手続きをしたいという場合には、司法書士に依頼することをおすすめします。
相続登記に関するよくある質問(Q&A)

- 相続登記の費用はどれくらいかかりますか?
- 主に以下の2種類の費用がかかります。
1.登録免許税:固定資産税評価額の0.4%が国に納める税金としてかかります。
2.専門家報酬:司法書士に依頼する場合の報酬です。事案の複雑さ(相続人の数、放置期間の長さなど)によって変動します。
oこの他、戸籍謄本などの必要書類の取得実費がかかります。長期間放置されていたケースでは、戸籍収集費用が高くなる傾向があります。 - 義務化の期限である「3年」は、いつからカウントされますか?
- 相2024年4月1日以降に発生した相続の場合、「不動産の相続を知った日」から3年以内です。
義務化開始(2024年4月1日)より前に相続が発生している不動産についても、以下のいずれか遅い日から3年以内に登記が必要です。
1.2024年4月1日
2.不動産の相続を知った日
- 相続登記の放置に「時効」はありますか?
- 相続登記には時効はありません。長期間放置しても、自動的に国や他人のものになることはありません。
ただし、放置期間が長くなるほど、上記のリスク(相続人の複雑化、認知症、書類の紛失など)が現実化し、手続きの労力と費用は増大していきます。
また、2024年4月からは義務化による期限と罰則が設けられたため、「放置し続けても良い」という認識は完全に過去のものとなりました。
まとめ

相続登記は、不動産の所有権を明確にして将来的なトラブルを避けるために不可欠な手続きです。相続登記をしないで長期間放置していると、様々なリスクが発生します。もし現在、放置してしまっている相続登記がある場合は、一刻も早く手続きをすることをおすすめします。
司法書士は、複雑な戸籍の調査から遺産分割協議のサポート、登記申請書の作成、法務局とのやり取りまで、一連の手続きを代行できます。司法書士に任せることで、時間と労力を大幅に削減できるだけでなく、法的なリスクを回避し、スムーズに相続登記を完了させることができます。相続登記でお困りの方は、当事務所にご相談ください。

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