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認知症で預金口座が凍結されるケースについて

監修
司法書士 速水陶冶
/司法書士法人はやみず総合事務所 代表

東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。

東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。

高齢になると判断能力が衰え、認知症になるリスクが高まります。高齢化の進む日本では、認知症の人は今後も増加する見込みです。ところで、認知症になると、本人の銀行の預金口座が凍結されることがあるのをご存じでしょうか?

今回は、認知症の人の預金口座の凍結について説明しますので、将来困ることのないよう対策をしておいてください。

認知症になるとなぜ預金口座が凍結される?

キャッシュカード

認知症になると判断能力が衰える

認知症については、ほとんどの人がどんな状態かを知っていると思います。認知症は正式な病名ではありません。記憶力や判断能力などに障害が起こっている状態を言います。かつては痴呆と呼ばれていましたが、現在は認知症という呼び方に統一されています。

認知症の原因は様々ですが、最も多いのがアルツハイマー型認知症です。高齢になるとアルツハイマー型認知症を発症する可能性が高くなります。

認知症になると、物事を覚えられなくなったり、会話を理解できなくなったりします。単なる物忘れとは違い、記憶がすっぽり抜け落ちたような状態になります。

認知症の人は、日常生活のいろいろな場面で、自分で適切な判断をすることが困難になってしまうのです。

認知症の人は財産を適切に管理できない

認知症になると、お金の管理ができなくなってしまいます。たとえば、何にいくらお金を使ったかを覚えていないこともあります。銀行のキャッシュカードの暗証番号自体覚えられないということもあるでしょう。

認知症の人は、他人に言われるままに預金口座からお金を引き出してしまったり、キャッシュカードを渡してしまったりするリスクもあります。悪徳業者に騙されて、高額のお金を払わされてしまうこともあるでしょう。

認知症の人が自分でお金の管理をしていると、大切な財産を失ってしまいかねません。

本人の財産を守るため銀行は預金口座を凍結する

認知症の人がお金を銀行に預けている場合、そのままではトラブルになることも考えられます。そのため、銀行は口座名義人が認知症であることがわかると、預金口座を凍結する取り扱いをします。

認知症の人の口座凍結は、本人の財産を守るために行われるものなのです。

銀行はどんなときに預金口座を凍結する?

通帳

口座凍結は死亡したときだけではない

そもそも、口座凍結とはどのような状態なのでしょうか?凍結とは凍りつくことですが、資産などの移動を一時的に禁止することやその状態を意味することもあります。

預金口座が凍結されると、口座に入っているお金を動かすことができません。口座に入金も出金もできなくなるということです。

預金口座が凍結される場合として、よく知られているのが、口座名義人が亡くなったときです。亡くなった人の預貯金を誰が相続するのかを銀行はすぐに把握できません。

誰かが勝手に預貯金を引き出すなどしてトラブルになることのないよう、所定の相続手続きが行われるまで、口座を凍結することにしているのです。

その他に、銀行からの借入がある人が債務整理した場合にも、預金口座が凍結されます。これは、銀行が残っている預金を残債と相殺するためです。口座名義人が認知症になった場合にも、トラブル防止のため口座凍結が行われ、一切の入出金ができなくなります。

認知症の人の預金口座が凍結されるケースとは?

銀行が認知症の人の預金口座を凍結するのは、本人が認知症であることを知ったときです。たとえば、以下のような場合に、認知症の人の口座が凍結されます。

①認知症の発症に気が付いた親族が口座凍結するケース

認知症の人の家族などが銀行に申し出て、預金口座が凍結されることがあります。認知症の人の口座をそのままにしていれば、本人がよくわからないままお金を引き出すなどして、トラブルになりかねないからです。

②顧客の認知症を察知した銀行側が口座凍結するケース

口座名義人本人が銀行に出向いたとき、銀行の側で口座名義人が認知症であることに気付き、口座凍結するケースもあります。

銀行の窓口でまとまったお金を引き出すときには、意思確認や本人確認が行われるのが通常です。会話をしている際に、本人が意味不明な内容を話すようなことがあれば、銀行側も不審に思って口座を凍結します。

また、本人が家族と一緒に銀行に出向いて、認知症であることに気付かれるパターンもあります。口座名義人本人以外は、たとえ家族であっても口座解約ができません。

施設入所のお金を引き出すために本人を無理矢理銀行に連れて行くこともあると思いますが、このようなケースでも銀行側が本人の認知症に気付けば、口座凍結されてしまいます。

認知症による口座凍結を解消する方法は?

アイデア

認知症の人の預金口座を管理するには成年後見人が必要

認知症の人の口座が凍結されてしまった場合、凍結を解消するには、成年後見人を選任してもらう必要があります。成年後見人とは、認知症などで判断能力が低下した人の代わりに財産管理や法律行為などを行う支援者です。

成年後見制度には法定後見と任意後見の2種類がありますが、既に認知症になっている人は、法定後見を利用して家庭裁判所で成年後見人を選任してもらう必要があります。

成年後見人が選任されると、成年後見人が本人の財産を管理することになります。成年後見人は自らが成年後見人に選任されたことを銀行に届出し、口座凍結を解除してもらいます。

成年後見人が選任された後は、成年後見人が本人の法定代理人として、口座の入出金や解約を行うことになります。

成年後見人は家庭裁判所に申し立てて選任してもらう

口座凍結を解消するため、認知症の人の成年後見人を選任してもらうには、家庭裁判所に後見開始の審判を申し立てる必要があります。申し立ての際には、親族などを後見人候補者として指定することができます。候補者は特に指定しなくてもかまいません。

後見開始の申し立ての際には、申立書のほかに、本人の戸籍謄本や住民票、診断書、財産に関する資料などを提出します。申し立て後、裁判所で審理が行われます。

審理の流れ

後見開始申し立て後の審理の際には、申立人や後見人候補者の調査が行われます。さらに、本人にも事情聴取が行われます。親族への書面による意向照会がされることもあります。

また、申し立て時に提出する診断書とは別に、医師による鑑定が行われることがあります。鑑定のためには5~10万円程度の費用がかかるため、これをあらかじめ裁判所に納める必要があります。鑑定は行われないこともあります。

候補者以外の第三者専門家が成年後見人になることも

調査や鑑定が終了した後、家庭裁判所は後見開始の審判をし、同時に成年後見人を選任します。家庭裁判所は、本人の心身の状態や生活状況、後見人候補者の生活状況、後見人候補者と本人との利害関係の有無、本人の意見などから総合的に判断して成年後見人を決めます。

申立人が指定した後見人候補者が適切でないと判断された場合には、第三者である専門家(弁護士、司法書士、社会福祉士など)が成年後見人に選任される場合もあります。

また、候補者が成年後見人になる場合でも、監督のため成年後見監督人を第三者専門家から選任することがあります。

なお、第三者専門家が成年後見人や成年後見監督人になる場合には、報酬が発生するため、本人の財産からこれを支払う必要があります。報酬の金額は、家庭裁判所が決めることになっています。

まとめ

認知症の人の銀行口座が凍結された場合には、成年後見人を選任してもらわないと、凍結を解消できません。家庭裁判所に申し立てをし、審判により選任された成年後見人に、銀行での手続きを任せましょう。


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速水 陶冶
(はやみず とうや)

東京司法書士会(登録番号 5341号)
※簡易裁判所代理権認定(認定番号 1001015号)

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