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役員借入金の資本組み入れ(DES)完全ガイド|メリット・手続き・登記まで司法書士が解説

監修
司法書士 速水陶冶
/司法書士法人はやみず総合事務所 代表

東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。自身の経験から、相続や借金に関する問題の困難さとその解決の重要性を深く理解しており、依頼者の不安に寄り添った丁寧なサポートを信条としている。

東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。自身の経験から、相続や借金に関する問題の困難さとその解決の重要性を深く理解しており、依頼者の不安に寄り添った丁寧なサポートを信条としている。

会社の財務体質を改善したい、あるいは事業承継やM&Aを控え、会社を健全な状態にしたいと考える経営者にとって、「役員借入金」の処理は避けて通れない課題です。

特に、その負債が原因で債務超過に陥っている場合、銀行融資や対外的な信用に悪影響を及ぼします。

この記事では、登記の専門家である司法書士が、役員借入金を合法的に解消し、資本に組み入れるDES(デット・エクイティ・スワップ)について、メリット、会社法上の手続き、そして不可欠な登記申請までを詳しく解説します。

債務超過を即座に解消:役員借入金を資本金に変え、企業の信用と財務体質を劇的に改善する戦略を解説します。

登記手続きを司法書士が迅速に完了:検査役調査の例外規定を活用し、増資登記を安全・確実に進める手順をご紹介します。

税務・法務リスクを完全に回避:DES実行時の注意点と、専門家連携による最も安全な処理方法をご説明します。

DES(デット・エクイティ・スワップ)とは?基礎知識を解説

DESは単なる会計処理ではなく、会社法に基づく「増資」という厳格な手続きです。
ここを疎かにすると、後で登記のやり直しや法務局からの補正指示を受けることになります。

DESの定義:デット・エクイティ・スワップ(Debt Equity Swap)

DESとは、日本語で「債務の株式化」または「債務の資本組み入れ」を意味します。

端的に言えば、会社が抱える負債(Debt)を、その会社に対する出資(Equity:株式)に交換する手法です。今回のように役員借入金が対象の場合、会社が役員から借りていたお金(返済義務のある負債)を、会社が役員に発行する株式と交換することで、負債を資本金に振り替えます。

DESが解決する経営課題

DESを適切に実施することで、特に以下の重要な課題が解決されます。

課題     DESによる効果
債務超過の解消 負債が資本金に振り替わるため、バランスシート上の純資産が増加し、債務超過の状態を解消できます。
返済義務の消滅 役員への返済義務が法的に消滅し、キャッシュフローへの負担がなくなります。
信用力の向上 財務体質が改善されることで、銀行からの融資を受けやすくなり、対外的な信用力が高まります。

DESによる役員借入金解消の具体的なメリット

銀行融資やM&Aを意識するなら、財務改善は不可欠です。
DESのメリットは数字だけでなく、社長の返済義務という心理的な負担も解消できる点にあると、実務を通して感じています。

【財務面】債務超過の解消と銀行融資への影響

DESの最大のメリットは、負債を自己資本に変える点です。

例えば、貸借対照表(B/S)の負債の部に計上されていた役員借入金が資本の部に移ることで、自己資本比率が劇的に改善します。これは金融機関が融資を判断する上で非常に重要な指標であり、事業拡大のための資金調達がしやすくなります。

【税務面】「みなし贈与」のリスク回避

役員借入金を解消する方法として、単なる債権放棄も考えられます。しかし、債権放棄の場合、会社側には債務免除益が発生し、法人税の課税対象となります。

DESは、債権を現物出資という形で処理するため、税務上のリスクが低減され、適正な手続きを踏むことで「みなし贈与」として課税されるリスクを回避することができます。(※ただし、税務上の詳細な判断は税理士と連携が必要です。)

DESを実施するための会社法上の手続きの流れ

DESは会社法上の現物出資による増資(第三者割当増資)に該当するため、厳格な手続きが求められます。

ステップ1:債権の確定と評価
まず、現物出資の対象となる役員借入金の金額(債権額)を確定します。この債権をいくらの価値で現物出資するかを決定します。

ステップ2:株主総会における決議
現物出資による増資を行うため、原則として株主総会の特別決議が必要です。この決議で、DESの実施、発行する株式数、割当先(役員)、及び現物出資財産(債権)の価額を決定します。

ステップ3:【最重要】現物出資の検査役選任の原則と例外規定
会社法では、現物出資の適正な価額を証明するため、原則として裁判所が選任する検査役の調査が必要とされています。

しかし、この検査役の調査は時間とコストがかかるため、以下の例外規定のいずれかを満たすことで検査役の調査を省略できます。

【例外①】 価額の総額が500万円以下である場合

【例外②】 市場価格のある有価証券の場合

【例外③】 会社に対する金銭債権であり、その価額が負債の帳簿価額を超えない場合(会社法第207条第9項第3号)

役員借入金のDESでは、会社は返済義務のある金額(帳簿価額)を超えて評価することはないため、この規定に該当することが実務上最も多いです。

【例外④】 弁護士、税理士、司法書士などによる証明を受けた場合

金銭債権を現物出資する場合、この**【例外④】の規定を利用し、上記の専門家のいずれかが作成した証明書**を添付することで、検査役調査を省略できます。

ステップ4:必要となる議事録・契約書の種類
特別決議を経た後、債権現物出資契約を締結し、増資の効力発生日に向けて必要書類を整備します。

司法書士が行うDESの登記手続き

DESの実施によって資本金が増加するため、法務局への変更登記申請が不可欠です。

増資の登記の必要書類と流れ

司法書士は、会社法の手続きと登記の専門家として、弁護士や税理士と連携しつつ、検査役調査を省略するための証明書の作成を含め、以下の増資登記に必要な全ての書類作成・申請を代行します。

株主総会議事録

債権現物出資契約書

金銭債権の証明書

資本金及び資本準備金の額の計上に関する証明書

登記申請書

増資の効力発生日から2週間以内に登記を申請しなければならず、この期限に遅れると**過料(罰金)**の対象となるリスクがあります。

登録免許税の計算方法

増資の登記には登録免許税が必要です。

増加した資本金額の1,000分の7

ただし、この額が3万円に満たない場合は3万円

正確な計算と迅速な申請は、登記の専門家である司法書士にお任せください。

DESの依頼先は司法書士へ

DESは、財務戦略ですが、その実行には会社法上の厳格な手続きと正確な登記が求められます。

特に、会社法上の要件をクリアし、法務局での登記を間違いなく完了させる部分は、登記の専門家である司法書士の最も得意とする分野です。当事務所は、税理士など他の専門家と連携し、DESの実施が決定した後の「法務手続き」と「登記申請」をトータルでサポートします。

債務超過でお困りであれば、まずはDESが可能か、どのような手続きが必要か、無料相談をご利用ください。


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代表プロフィール

速水 陶冶
(はやみず とうや)

東京司法書士会(登録番号 5341号)
※簡易裁判所代理権認定(認定番号 1001015号)

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