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自筆証書遺言の要件を満たす正しい書き方と注意点

監修
司法書士 速水陶冶
/司法書士法人はやみず総合事務所 代表

東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。

東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。

自筆証書遺言の要件を満たす正しい書き方と注意点
自筆証書遺言とは、自分で手書きして作成する遺言のことです。
自筆証書遺言は、思いついたときすぐ作成でき、費用もかからないので手軽ですが、要件をみたしていなければ無効になってしまうリスクがあります。
ここでは、自筆証書遺言の要件を満たすためのポイントを解説します。
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自筆証書遺言の5つの必須条件

自筆証書遺言の5つの必須条件

自筆証書遺言は、次の5つの条件をみたしていなければなりません。

  • 遺言者が全文を自書
  • 作成した日付を自書
  • 氏名を手書きで署名
  • 押印する
  • 所定の方式で訂正li>

では、それぞれの要件について詳しく説明していきます。

1. 遺言者が全文を自書

遺言する本人が遺言書の全文を自分で手書きする必要があります。他人に代筆してもらうことはできません。パソコンで作成した遺言書や、手書きのものをコピーした遺言書は無効です。 ただし、相続法改正により、2019年(平成31年)1月13日以降、自筆証書遺言に財産目録を添付する場合には、その財産目録は手書きしなくてもよいことになりました。財産目録については、パソコンで作成したり、通帳のコピーや不動産登記事項証明書を添付したりしてもかまいません。

2. 作成した日付を自書

遺言書には作成日の記載が必須です。日付も手書きで書く必要があり、日付スタンプは使えません。年月日とも正確に書かなければならず、「〇年〇月吉日」といった記載は無効です。日付は遺言書を入れる封筒ではなく、遺言書そのものに記載しましょう。

3. 氏名を手書きで署名

遺言書に本人自らが署名する必要があります。通称やペンネームでも有効と判断されることもありますが、トラブル防止のため本名をフルネームで書くようにしましょう。鉛筆で書いても無効にはなりませんが、改ざん予防のため消せないボールペンや万年筆を使うのが安心です。

4. 押印する

氏名の後に押印が必要です。印鑑は認印でもかまいません。シャチハタなどのスタンプ式印鑑は、念のため避けた方がよいでしょう。拇印も有効とした判例はありますが、トラブル予防のためには印鑑を使うべきです。遺言書は重要な書類であるため、実印を押すのがおすすめです。 遺言書が複数枚になった場合、割印は必須ではありませんが、念のため割印しておくとよいでしょう。

5. 所定の方式で訂正

遺言書を書き間違えた場合、加除変更も認められています。ただし、訂正の仕方は民法で厳格に定められており、これに従って行わなければなりません。定められた方式で訂正されていない場合には、訂正はなかったものとして扱われます。 自筆証書遺言の訂正の手順は次のように複雑になっています。間違えたときには、一から作成し直した方が安心でしょう。

  • 遺言書中の訂正箇所を指示
  • ①で指示した部分について変更した旨を付記
  • ②の付記に署名
  • 訂正箇所に実際に変更を加える
  • ④で変更を加えた訂正箇所に押印

遺言書で決められること

遺言書で決められること

遺言書には何を書いても効力があるわけではありません。遺言書で決められることは、主に次のようなことです。

相続に関する事項

相続分の指定

法定相続分と異なる割合を指定できます。

遺産分割方法の指定

どの財産を誰に相続させるかを指定できます。

遺産分割の禁止

相続開始から5年を超えない期間を定めて遺産分割を禁止することができます。

推定相続人の廃除

相続人の中に、生前に虐待を受けるなどして財産を分け与えたくない人がいる場合には、廃除を行うことができます。

遺言執行者の指定

遺言の内容実現のために必要な手続きを行う「遺言執行者」を指定できます。

財産の処分に関する事項

遺贈

法定相続人以外の人に財産を譲ることができます。

一般財団法人の設立

一般財団法人の設立のために財産を使うことができます。

信託の設定

財産を信頼できる人や信託銀行に託して管理や処分を行ってもらう信託を設定できます。

身分に関する事項

認知

婚姻関係にない男女間に生まれた子の認知は、遺言ですることも可能です。

未成年者の後見人、後見監督人の指定

未成年の子がいる場合、親権者の代わりに財産管理・身上監護を行う後見人や、後見人を監督する後見監督人を指定できます。

自筆証書遺言の正しい書き方

自筆証書遺言の正しい書き方

本文の書き方

以下は、自筆証書遺言の本文の記載例です。本文は手書きする必要があります。

法務省ホームページより

財産目録の作り方

財産目録については、パソコンで作成してもかまいません。ただし、手書きでない財産目録を添付する場合には、財産目録の各頁に署名押印する必要があります。

法務省ホームページより

遺言書の訂正

遺言書を訂正するときには、その場所がわかるようにして、変更した旨を付記して署名し、変更した箇所に押印する必要があります。たとえば、以下のようになります。

封筒の書き方

封筒の書き方には決まりはありません。封筒に入っていなくても遺言書は有効です。自筆証書遺言は検認が終わるまでは開封しないのがルールなので、たとえば以下のように勝手に開封しないよう記載しておくとよいでしょう。

自筆証書遺言作成のメリット、デメリット

自筆証書遺言作成のメリット、デメリット

自筆証書遺言のメリット

自筆証書遺言のいちばんのメリットは、費用をかけずに自分で手軽に作成することができる点です。書いた気持ちや状況が変わった場合でも、何度でも簡単に作り直すことができます。遺言書を書いたことを秘密にすることも可能です。

自筆証書遺言のデメリット

自筆証書遺言のデメリットは、方式を間違えれば無効になる点です。また、書いた後に、紛失したり改ざんされたりするリスクもあります。保管場所によっては、発見されずに終わってしまう可能性もあります。 自筆証書遺言が残されているケースでは、相続開始後に家庭裁判所の検認を受けなければ、相続手続きを行うことができません。すぐに相続手続きに取りかかれない点もデメリットです。

自筆証書遺言書保管制度を利用してデメリットを解消

2020年(令和2年)7月より、自筆証書遺言書保管制度がスタートしました。これは、作成した自筆証書遺言を法務局で保管してもらえる制度です。 自筆証書遺言書保管制度には次のようなメリットがあり、自筆証書遺言のデメリットの多くを解消できます。

  • 法務局の窓口で方式のチェックをしてもらえる
  • 法務局に保管するので紛失や改ざんのリスクがない
  • 死亡時に相続人に遺言書の保管を通知してもらえる
  • 家庭裁判所の検認が不要

自筆証書遺言と公正証書遺言の違い

自筆証書遺言と公正証書遺言の違い

遺言書を作成する場合、自筆証書遺言以外に、公正証書遺言という方法もあります。公正証書遺言とは、公証人に遺言の内容を伝えて公正証書の形式で作成してもらう遺言書です。
自筆証書遺言と公正証書遺言の主な違いは、次のとおりです。

  自筆証書遺言 公正証書遺言
作成方法 自分で手書きして作成 公証人に作成してもらう
作成場所 自由 原則として公証役場
証人 不要 2名以上
保管方法 自宅などもしくは法務局 原本は公証役場で保管
検認 原則要(法務局に保管した場合には不要) 不要
費用 自分で作成すれば無料 公証人手数料と専門家の報酬で10~15万円程度
メリット ・作成が容易 ・作成の事実や内容を秘密にできる ・費用がかからない ・形式面で無効になるリスクがない ・紛失・改ざんのリスクがない ・検認が不要
デメリット ・形式面で無効になるリスクがある ・紛失・改ざんのリスクがある ・検認が必要 ・費用がかかる ・手続きが面倒 ・遺言の存在を完全に秘密にできない

公正証書遺言にした方が良い場合とは?

公正証書遺言を作成するには、手間や費用がかかります。しかし、特に以下のような場合には、公正証書遺言がおすすめです。

自分で遺言書を手書きできない場合

病気やケガのために遺言書を手書きできない場合には、自筆証書遺言を作成できません。公正証書遺言なら、公証人に作成してもらえるので、手書きできなくても作成可能です。公正証書作成時には、公証人に病院等に出張してもらうこともできます。

遺言執行者を指定したい場合

遺言執行者とは、遺言の内容を実現する人です。遺言書で相続人の廃除や認知をする場合には、遺言執行者が必要です。それ以外のケースでも、遺言執行者をしておくことで遺言の内容がスムーズに実現します。 遺言執行者は、自筆証書遺言でも指定できますが、適切な人がいないこともあります。専門家に依頼して公正証書遺言を作成してもらい、専門家にそのまま遺言執行者になってもらえば安心です。

まとめ

まとめ

自筆証書遺言を作成する場合には、細かい要件があるので注意しておきましょう。形式面を間違えると、せっかく作った遺言も無効になってしまいます。専門家に依頼して公正証書遺言を作成すれば、形式面だけでなく、内容も吟味した遺言書作成が可能です。

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代表プロフィール

速水 陶冶
(はやみず とうや)

東京司法書士会(登録番号 5341号)
※簡易裁判所代理権認定(認定番号 1001015号)

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