財産分与の際でも不動産取得税はかかるの?
監修
司法書士 速水陶冶
/司法書士法人はやみず総合事務所 代表東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。
東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。
離婚の際の財産分与で、夫婦の一方が家やマンションなどの不動産を譲り受けることは多いと思います。不動産をもらったときにかかる税金として不動産取得税がありますが、財産分与でも不動産取得税はかかるのでしょうか?
ここでは、不動産取得税をはじめ、財産分与の際にかかるかもしれない税金について解説します。
財産分与で不動産取得税はかかる?
不動産取得税とは?
不動産取得税は、不動産の所有権を取得したときに、都道府県から課税される地方税です。不動産とは、土地及び家屋のことです。取得とは、有償・無償、登記の有無は問わないとされています。
不動産取得税の税率
不動産取得税は、不動産の価格(固定資産評価額)に対して、原則4%の税率になります。ただし、土地及び住宅用家屋については、税率が3%に軽減される特例措置が設けられています。
財産分与では不動産取得税は原則的にかからない
財産分与で不動産を取得した場合、①その不動産が、実質的に夫婦の共有財産(形式的な登記名義は一方に属するが、婚姻中の夫婦の協力により取得された不動産であるため、民法の規定により実質的には夫婦の共有と推定されるもの)であり、かつ、②その財産分与が清算的な意味合いをもつものであれば、不動産取得税はかかりません。
離婚の際の不動産譲渡で不動産取得税がかかるケースとしては、元々夫婦共有名義であった不動産の一方の持分を財産分与した場合や、慰謝料代わりに不動産を譲渡したような場合が考えられます。
財産分与で贈与税はかかる?
贈与税とは
贈与税は、無償で財産を譲り受けたときにかかる税金で、国に支払う国税です。財産を贈与されたときだけでなく、債務を免除されたときなども、贈与税の課税対象になります。
贈与税は1年間に贈与を受けた財産の合計額のうち基礎控除額(110万円)を差し引いた部分に対して課税され、贈与額に応じて税率が変わります。
財産分与で贈与税はかかる?
離婚の際の財産分与で相手から財産をもらう形になる場合、無償で財産を譲り受けているため、「財産分与を受けると贈与税がかかるのではないか?」と心配される方も多いと思います。
財産分与では、贈与税は通常はかかりません。財産分与は夫婦が共同で築いた財産を清算するもので、贈与ではないからです。ただし、財産分与を行った場合でも、次の①、②に該当する場合には、贈与税がかかる可能性があります。
①財産分与された額が、夫婦の協力によって得た財産の額やその他の事情を考慮しても、多過ぎる場合(※この場合には、通常よりも多過ぎる部分について課税されます。)
②財産分与が贈与税・相続税逃れのために行われた場合(※この場合には、財産分与された全額に対して課税されます。)
財産分与で財産を渡した側にかかる譲渡所得税とは?
財産を譲った人にも税金がかかることがある
財産分与で財産を渡した側は、自らは財産を失っていますから、税金がかかることはないと考えてしまいがちです。しかし、財産を渡した側にも、譲渡所得税がかかることがあります。譲渡所得税は、財産の譲渡により発生した利益に対して課税されるものです。
財産分与ではなぜ譲渡所得税がかかる?
譲渡所得税がかかるのは、通常は不動産を売却したようなケースです。財産分与では、無償で財産を譲り渡しているため、なぜ譲渡所得税が課税されるのかが理解できないという方も多いでしょう。
実は、所得税法では、財産を所有することにより発生し蓄積された利益についても所得と考えます。そして、この所得に対しては、財産が所有者のもとから離れるときに譲渡所得税を課税して精算する形になっているのです。
譲渡所得とは
譲渡所得は、次の計算式で算出されます。
譲渡所得=譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額
不動産の財産分与では、次の点に留意して譲渡所得を計算します。
①譲渡価額
財産分与した当時の時価になります。
②取得費
不動産を購入したときの価格になります。
③譲渡費用
譲渡の際の経費(登記費用)などになります。
④特別控除
居住用不動産を譲渡した場合には、3000万円の特別控除が受けられます。この特別控除は、配偶者や親族に対する譲渡については認められませんが、離婚後の財産分与では配偶者ではなくなっているため、特別控除の対象になります。
譲渡所得税の税率
譲渡所得税では、取得した日の翌日から譲渡した年の1月1日までの所有期間が5年を超える場合には長期譲渡所得、5年以下の場合には短期譲渡所得と呼ばれ、それぞれで税率が変わります。
長期譲渡所得税額=課税長期譲渡所得金額×20%(所得税15%+住民税5%) 短期譲渡所得税額=課税短期譲渡所得金額×39%(所得税30%+住民税9%) ※別途復興所得税(2.1%)も課税
所有期間10年を超えていれば軽減税率が適用される
所有期間10年を超える居住用不動産を譲渡した場合、3000万円の特別控除を行った後の譲渡所得が6000万円を超える部分いついては、14%(所得税10%+住民税4%)の軽減税率が適用されます。
譲渡所得税の申告・納税はどうなる?
譲渡所得税がかかる場合には、確定申告を行って納税する必要があります。ただし、不動産の価格が下がっていて、譲渡益が発生していないことが明らかであれば、確定申告は不要です。特別控除を適用して税額がゼロになる場合には、基本的に確定申告が必要です。
財産分与が終わった後にかかる税金とは?
財産分与の登記の際には登録免許税がかかる
夫婦間で財産分与を行い、不動産の名義人でない方が不動産の所有者となる場合には、法務局で所有権移転登記をして不動産の名義変更をする必要があります。法務局で登記申請を行うときには、登録免許税を納める必要があります。
財産分与登記の登録免許税は、不動産の固定資産評価額の2%となっています。夫婦共有の不動産で、財産分与により持分を譲渡した場合には、その持分の価額の2%となります。
登録免許税は、税額分の収入印紙を購入し、登記申請書と一緒に提出する収入印紙貼付台紙に貼って法務局の窓口に提出する形で納付します。
財産分与の際、登録免許税は原則的に共同で納付することになりますが、話し合いによりどちらか一方が負担する形にしてもかまいません。たとえば、1000万円の不動産でも、登録免許税は20万円と比較的高額です。
離婚協議の際には、後でもめることのないよう、登録免許税の負担についても決めておくのがおすすめです。
不動産の所有者になると固定資産税の負担がある
固定資産税は、不動産の所有者に毎年課税される税金で、市町村(東京23区は都)に納税します。固定資産税の納税義務者は、毎年1月1日時点での不動産の所有者です。
固定資産税は原則として登記上の所有者に課税されるため、法務局で財産分与登記を行った翌年度以降は、財産分与で不動産をもらった側に固定資産税の納税通知が届くことになります。固定資産税の標準税率は1.4%で、固定資産評価額に対して課税されます。
年度の途中で離婚し、財産分与を行う場合には、その年の固定資産税をどのようにして精算するかを決めておく必要があります。日割り計算でするのが公平ですが、双方が合意すれば一方が負担する形にしてもかまいません。
後でトラブルにならないよう、話し合って決めた内容は離婚協議書にして残しておきましょう。
まとめ
財産分与では、不動産取得税や贈与税は通常かからないため、不動産をもらう側は税金を気にする必要はありません。不動産を渡す側は譲渡所得税の課税対象になりますが、マイホームの譲渡の場合には3000万円の特別控除があるため、税額が発生しないケースが多くなります。
財産分与の際の税金について心配な点がある場合には、専門家に相談し、アドバイスを受けましょう。
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