遠方にある不動産の相続、どうすればいい?|手続きの流れと解決策を司法書士が解説
監修
司法書士 速水陶冶
/司法書士法人はやみず総合事務所 代表東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。
東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。


現地に行けなかったり、使う予定がなかったりすると、つい放置してしまいがちですが、注意が必要です。2024年から相続登記は義務化され、放置すれば過料(罰金)が科される可能性があります。
この記事では、遠方の不動産を相続した際にどのような選択肢があるのか、相続登記の流れや注意点、不要な土地を手放す方法まで、司法書士がわかりやすく解説します。
2024年の相続登記義務化に注意!:遠方にある不動産を放置すると、2024年からの義務化により罰金が科される可能性があります。
「いらない」だけでは済まない:不動産だけを放棄することはできず、「相続放棄」をするとすべての財産を手放すことになります。
専門家への相談が解決への近道:相続手続きは複雑です。司法書士に依頼すれば、現地に行かずに手続きを進めることができ、スムーズな解決が期待できます。


目次
遠方の不動産を相続したらどうする?


不動産を活用したい場合
相続した不動産に住むつもりはないけれど、「人に貸して家賃収入を得たい」「将来的に住みたいので持っておきたい」と考える方もいるでしょう。
その場合、まず相続登記を行って名義を変更しなければなりません。しかし、他に相続人がいる場合には、あなた一人ですぐに名義を変えることはできません。遺産分割協議を行い、あなた自身が不動産を相続することについて、他の相続人全員の同意を得る必要があります。
不動産を売却したい場合
不動産を使う予定がなければ、売却して現金化する方法も有効です。
不動産を売却する際も、やはり相続登記をして名義を変える必要があります。さらに、他の相続人がいる場合は全員の同意が不可欠です。誰か一人でも反対すれば売却はできないため、相続人同士の調整に時間がかかることも少なくありません。早めに話し合うことが大切です。
不動産だけを相続放棄できる?
「売れそうにない土地だから放棄したい」と考える人もいるかもしれません。しかし、不動産だけを放棄することはできません。相続放棄をすると、預貯金など不動産以外の財産も含めて、相続人としての権利をすべて手放すことになります。また、相続放棄には「相続開始を知ったときから3か月以内」という期限もあるため、迷っている間に期限が過ぎてしまうこともあり得ます。
ただし、2023年4月からは、不要な土地を国に引き取ってもらえる「相続土地国庫帰属制度」がスタートしました。この制度を利用できるのは一定の要件を満たす土地に限られますが、使い道のない土地を抱え続けるリスクを減らせる可能性があります。
遠方にある不動産の相続手続きの流れ


相続人・相続財産の確定
手続きを進めるには、まず相続人全員を確定する必要があります。亡くなった人(被相続人)の出生から死亡までの戸籍謄本を取得し、相続人調査を行います。この際、前婚の子や認知した子など、家族が知らない相続人がいる場合もあるため注意が必要です。相続財産についても、不動産以外に預貯金や株式などの金融資産がないか、漏れがないように調べましょう。
遺産分割協議
遺産分割協議とは、相続財産の分け方について話し合うことです。相続人全員が参加する必要があり、疎遠な相続人にも連絡を取って話し合いをします。文書や電話でやりとりすることも可能です。最終的に、相続人全員が合意した内容を遺産分割協議書という書面にまとめ、全員が実印を押印します。
相続登記
不動産を相続人名義に変更するために、相続登記を行います。申請は、不動産の所在地を管轄する法務局に行います。相続登記の際には、相続関係がわかる戸籍謄本一式、被相続人の住民票除票、不動産を相続する人の住民票、相続人全員の印鑑証明書、遺産分割協議書、固定資産評価証明書などの書類が必要です。必要書類に漏れがあったり、記載を間違えたりすると、申請が受け付けられないため、慎重な手続きが求められます。
上記の手続きは、遺言書がないケースです。被相続人が不動産を特定の相続人に譲る旨の遺言書を残している場合は、遺言書の内容が優先されるため、遺産分割協議は不要です。遺言書で指定された人が、遺言書を添付して相続登記を申請できます。


遠方にある不動産の相続手続きにおける問題点


①現地への移動が負担になる
不動産の現状確認や必要書類の収集のために現地に行きたくても、遠方だと時間や費用がかかってしまいます。特に高齢の相続人にとって、遠距離の移動は体力的にも大きな負担となります。
②相続人の誰も不動産を欲しがらない
他の相続人も皆遠方に住んでいると、誰も不動産を欲しがらないケースがあります。売却して現金化できればいいですが、あまり価値がなく、売れる見込みがないことも珍しくありません。このような場合、遺産分割協議で不要な不動産を押し付け合うことになってしまうこともあります。
③相続登記をする法務局も遠方になる
相続登記は不動産の所在地を管轄する法務局に申請しなければなりません。郵送やオンラインでも申請は可能ですが、不慣れな人にとっては窓口で相談しながら手続きを進めたいと考えるでしょう。郵送やオンラインを利用した場合でも、内容に不備があればやり直しが必要です。
遠方にある不動産の相続を司法書士に依頼するメリット


メリット1.遠方でも郵送やオンラインで対応してもらえる
相続登記の申請は、郵送やオンラインでも可能です。登記手続きに精通している司法書士に依頼すれば、遠方の法務局への登記申請もオンラインなどで速やかに対応してもらえます。
そのため、必ずしも不動産の所在地近くの司法書士に依頼する必要はありません。打ち合わせしやすい場所の司法書士に依頼しても対応してもらえます。
メリット2.戸籍謄本の収集や相続財産調査も任せられる
相続登記には多くの書類が必要です。これらの書類を遠方の役所から取り寄せることも多いでしょう。特に古い戸籍は見方がわかりにくく、収集に手間取ってしまう可能性があります。司法書士には、戸籍謄本等の収集から任せることが可能です。専門家に任せることで、複雑なケースでも迅速に必要書類を揃えることができます。
メリット3.相続放棄や売却の相談もできる
不動産以外に財産がなく、活用する予定もない場合、相続放棄も選択肢の一つとなります。また、相続土地国庫帰属制度の利用や、不動産の売却を検討している方もいるでしょう。司法書士には、不動産を手放す方法についても相談できます。それぞれの方法のメリットやデメリットを知った上で、最善の選択ができるようになります。
まとめ

2024年4月から相続登記が義務化され、「遠方だから」「不要だから」と放置することは許されなくなりました。不動産だけを相続放棄することはできませんが、相続土地国庫帰属制度によって不要な土地を手放せる可能性はあります。
遠方にある不動産でも、司法書士に依頼すれば現地に行くことなく、スムーズに手続きを進めることができます。相続した不動産についてお悩みの方は、早めに専門家である司法書士に相談することをおすすめします。


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