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カテゴリー: 基礎知識

剰余金・準備金の資本組入れとは?手続きの流れと登記の注意点を解説

監修
司法書士 速水陶冶
/司法書士法人はやみず総合事務所 代表

東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。

東京司法書士会所属。1979年東京都生まれ。幼少期に父親が事業に失敗し、貧しい少年時代を過ごす。高校を中退した後、様々な職を転々とするも一念発起して法律家の道へ。2009年司法書士試験合格。

会社の資本金を増やす「増資」を行いたい場合、新たに株式を発行し、株主に現金を払い込んでもらう方法をとることが多いと思います。
一方で、株式は発行せず、会社が既に保有しているお金を資本金に振り替える方法があるのをご存じでしょうか?
この記事では、剰余金・準備金と呼ばれる会社のお金を資本金に組み入れる手続きについて説明します。

新たに株式を発行せず、会社の剰余金や準備金を資本金に振り替えることで増資する方法を「無償増資」と言います。

剰余金や準備金を資本に組み入れるには、「株主総会の決議」が必要です。

手続きが完了したら、2週間以内に「法務局で変更登記」を行う必要があります。

準備金を資本に組み入れる場合は、原則として「債権者保護手続き」も必要になります。

当事務所では、「剰余金や準備金の資本組み入れをしたいが、どうすればいいか分からないので丸投げしたい!」という方のご相談をお受けしています。

株式を発行せずに資本金を増やす方法とは?

増資の種類について簡単に説明します。

増資の方法は、大きく分けて2つあります。

1つは、新しく株式を発行して資金を調達する「有償増資」です。これは、外部からお金を呼び込むことで、会社の財産を増やすことができる一般的な増資方法です。

もう1つが、この記事で詳しく解説する「無償増資」です。これは、すでに会社が持っているお金(剰余金や準備金)を資本金に振り替える方法です。この方法なら、新たな資金の払い込みは必要なく、株主構成も変わりません。

この記事では、この「無償増資」の手続きについて詳しく解説します。

無償増資のメリット

無償増資=剰余金や準備金の資本組み入れのメリットは以下のとおりです。

1. 資金の払い込みが不要

有償増資では、新たな株式を発行し、株主が現金を払い込む必要があります。しかし、無償増資では、すでに会社にあるお金を使うため、新たな資金の払い込みは一切ありません。これにより、増資にかかる手間やコストを抑えることができます。

2. 株主構成に影響しない

有償増資の場合、新しく株式を発行するため、既存の株主の持株比率が変動することがあります。これは、経営権の安定性に関わる重要な問題となることがあります。一方、無償増資では、新たな株式を発行しないため、既存の株主の持株比率は変わらず、経営権に影響を与えることはありません。

3. 会社の信用力向上

資本金が増えることで、会社の財務状況が安定していると見なされ、金融機関や取引先からの信用力が向上します。これにより、新たな取引先の開拓や、銀行からの融資を受けやすくなる可能性があります。

資本剰余金とは?

「資本剰余金」は、新株発行などの資本取引から生じた剰余金のことです。
資本剰余金には、「資本準備金」と「その他資本剰余金」があります。

資本準備金とは?

資本準備金は、株主が会社に払い込んだお金のうち、資本金として計上しなかったお金のことです。会社法では、資本金の2分の1を超えない額は、資本準備金として積み立てておくことができるとされています。

資本準備金は、赤字補填のために活用できます。資本準備金を積み立てておけば、会社の業績が悪化したときに、資本準備金を取り崩して、会社の財産を維持することが可能になります。

また、払込金額の一部を資本準備金とすることで、節税効果もあります。会社に課税される法人住民税は資本金の額に応じてかかるため、資本金が少ない方が税金も抑えられるのです。

その他資本剰余金とは?

「その他資本剰余金」に含まれるものは、資本金及び資本準備金減少差益、自己株式処分差益(自己株式を譲渡した際の差益)などです。

利益剰余金とは?

利益剰余金は、会社で得られた利益のうち、株主に配当されず、会社に蓄積されているお金です。
会社の利益は、全部を株主に配当する必要はなく、一部を会社に留保しておくことができます。
利益剰余金は、「利益準備金」と「その他利益剰余金」に分かれます。

利益準備金とは?

会社法では、利益剰余金の一部を積み立てることが義務付けられており、これを利益準備金と言います。会社は、株主に配当金を支払うとき、配当金の10分の1を利益準備金として積み立てる必要があります。利益準備金の限度額は、資本準備金と合わせて資本金の4分の1です。

その他利益剰余金とは?

「その他利益剰余金」には、別途積立金、配当平均積立金、設備拡張積立金などの任意積立金や繰越利益剰余金が含まれます。

剰余金を資本組み入れする手続き

「剰余金」を資本に組み入れるための具体的な手続きを解説します

剰余金の資本組み入れとは?

剰余金の資本組み入れとは、「その他資本剰余金」及び「その他利益剰余金」を資本金に組み入れることです。

会社法施行当時は、資本と利益を明確に区別するために、利益の資本組み入れは禁止されていました。そのため、剰余金については「その他資本剰余金」のみしか資本組み入れができませんでした。平成21年3月の会社計算規則改正により、現在は「その他利益剰余金」の資本組み入れも可能になっています。

剰余金の資本組み入れに必要な手続き

剰余金を資本組み入れするときには、株主総会の普通決議が必要になります。定時株主総会だけでなく、臨時株主総会でも剰余金の資本組み入れの決議ができます。

株主総会では、減少する剰余金の額(増加する資本金の額)を決めると同時に、その効力発生日も決めます。なお、減少する剰余金の額は、効力発生日における剰余金の額を超えることはできません。

剰余金の資本組み入れをしたときの登記

剰余金の資本組み入れをすると、資本金の額が変わるため、法務局で変更登記を申請する必要があります。
必要書類等は以下のとおりです。
登記申請の必要書類

・株主総会議事録
・株主リスト
・剰余金の額が計上されていたことを証する書面

登記申請の期限

資本金変更の効力が生じた日から2週間以内

登録免許税

増加する資本金の額の0.7%(※その額が3万円未満のときには3万円)

計算例1

資本金を100万円増やす場合
計算式:1,000,000円 × 0.7% = 7,000円
納付額:計算結果が3万円未満のため、3万円となります。

計算例2

資本金を500万円増やす場合
計算式:5,000,000円 × 0.7% = 35,000円
納付額:計算結果が3万円以上のため、35,000円となります。

準備金を資本組み入れする手続き

「準備金」を資本に組み入れるための具体的な手続きを解説します

準備金の資本組み入れとは?

準備金の資本組み入れとは、資本準備金及び利益準備金を資本金に組み入れることです。

準備金の資本組み入れに必要な手続き

準備金を資本組み入れする場合には、株主総会の決議だけでなく、債権者保護手続きが必要になります。準備金の資本組み入れ手続きの流れは次のとおりです。

株主総会の決議

準備金を減少させて資本組み入れするには、株主総会の決議(普通決議)が必要です。定時総会に限らず、臨時総会で決議することもできます。減少する準備金の額、減少する準備金のうち資本金に組み入れる額、効力発生日を決議します。
なお、株式の発行と同時に準備金を減少する場合、減少後の準備金の額が減少前の準備金の額を下回らないときには、取締役会の決議でもかまいません。

債権者保護手続き

準備金を減少させるときには、原則として債権者保護手続きが必要です。債権者保護手続きとは、官報での公告と債権者への個別の催告になります。官報公告は、効力発生日から1か月以内に行わなければなりません。
ただし、減少する準備金をすべて資本金に組み入れる場合、定時総会で決議した準備金の減少額が総会日における欠損の額を超えない場合には債権者保護手続きは不要です。

登記申請

準備金を資本に組み入れて資本金の額が変更したときには、法務局で変更登記を行わなければなりません。

法務局で変更登記を申請する際の必要書類等は以下のとおりです。
登記申請の必要書類

・株主総会議事録(取締役会で決議したときには取締役会議事録)
・株主リスト
・準備金の額が計上されていたことを証する書面

登記申請の期限

資本金変更の効力が生じた日から2週間以内

登録免許税

増加する資本金の額の0.7%(※その額が3万円未満のときには3万円)

計算例1

資本金を100万円増やす場合
計算式:1,000,000円 × 0.7% = 7,000円
納付額:計算結果が3万円未満のため、3万円となります。

計算例2

資本金を500万円増やす場合
計算式:5,000,000円 × 0.7% = 35,000円
納付額:計算結果が3万円以上のため、35,000円となります。

税務署等への届出

資本金の額を変更した場合には、税務署、県税事務所、市町村役場に異動届出書を提出して届出する必要があります。変更登記が終わったら、登記事項証明書を取得して届出手続きをしましょう。

まとめ

資本金を増やす増資の手続きは、複雑でわかりにくいところがあります。登記申請には2週間という期限もありますから、手続きの流れや必要書類について把握した上で、準備を進めなければなりません。
当事務所では、剰余金・準備金を資本金に組み入れて増資する手続きについても、トータルにサポートします。面倒な増資をスムーズに完了させるために、手続きは専門家にお任せください。

当事務所では、「剰余金や準備金の資本組み入れをしたいが、どうすればいいか分からないので丸投げしたい!」という方のご相談をお受けしています。

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代表プロフィール

速水 陶冶
(はやみず とうや)

東京司法書士会(登録番号 5341号)
※簡易裁判所代理権認定(認定番号 1001015号)

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